limited availability
RevOps 2024
Arrow Icon
Establish Icon

持続的成長のエンジン:RevOpsとは?|前編

written by

Erika Kawakami

Theme

RevOps

Date

March 9, 2026

Overview

「DXのパラドックス」:日本企業を阻む手段先行の罠

多くの日本企業が陥っているのが、理想と現実が乖離する「DXのパラドックス」です。ここで私が最も警鐘を鳴らしたいのは、欧米企業との根本的なアプローチの違いです。

欧米の高成長企業は、まず「モデル(戦略と戦術)」を設計し、次に「プロセス(定義)」を固め、最後に「ツール(テクノロジー)」を導入します。対して、日本企業の多くは「施策」が先行し、都度問題解決をパッチ当て的に実施する施策が積み上がっています。この逆転現象こそが、投資対効果を著しく低下させている原因です。

この構造的問題は、以下の3つの症状として現れます。

  • 成果の証明不能:施策は実施しているしツールも動いているが、それが具体的に売上や受注の向上にどう寄与したのかが誰にも説明できない。
  • 属人化によるリズムの断絶:特定の担当者だけがオペレーションを知っている「人力DX」により、担当交代のたびに一旦止まる、あるいは動かなくなる。
  • 断絶された指標:部門ごとに追っている数字が異なり、組織全体としての「正しい現在地」が見失われている。

見えない壁:組織の競争力を蝕む「サイロ化」の腐食

組織を内側から腐食させる最大の敵、それが「サイロ化」です。マーケティング、営業、カスタマーサクセスが独立した孤島と化し、共通のリズムを失っている状態です。

このサイロ化は、単なるコミュニケーション不足に留まりません。

  • 文化的な摩擦:「リードの質が低い」と嘆く営業と、「フォローが遅い」と憤るマーケティング。共通のゴールがないために、本来味方であるはずの部門間に対立が生まれます。
  • 勘に頼る意思決定:データが分断されているため、経営層は断片的な報告しか受けられません。場合によっては自部門に忖度したデータの解釈が上がってくることもあります。結果として、「データは見ても参考にならない」「管理職が勘で判断せざるを得ない」という、デジタル時代とは思えないリスクを抱えることになります。
  • 断絶された顧客体験:部門をまたぐたびに顧客は同じ説明を繰り返す必要が発生し、組織に対する不信感が出てしまいます。

RevOpsの定義:レベニューエンジンを動かす4つの柱

RevOpsとは、マーケティング・営業・カスタマーサクセスまで、レベニュー組織全体の協業プロセスを強化し、戦略的な生産性向上を支援するための「方法論」であり「役割」です。私はこれを、組織に一貫したリズムをもたらす4つの柱で定義しています。

  • オペレーションマネジメント:効率的なプロセスの開発と、標準的なワークフローの設計。
  • レベニューイネーブルメント:現場が最大のパフォーマンスを発揮するための教育やプレイブックの整備。
  • レベニューテクノロジー(RevTech)管理:レベニューテクノロジースタックの選定や統合。
  • データマネジメント&インサイト:信頼できるデータに基づき、経営判断を支える客観的な洞察の提供。

RevOpsは、チーフレベニューオフィサー(CRO)の真のパートナーとして、データの「解釈」に左右されない、透明性の高い情報基盤を構築します。

戦略的価値:RevOpsがビジネスに吹き込む5つの力

RevOpsを実装することは、組織に以下の価値をもたらします。

  • データドリブンな意思決定:組織から「勘」を排除し、レベニュープロセス、カスタマージャーニー全体の課題を数値で特定します。
  • セールス生産性の向上:営業担当者が事務作業に費やす「20%の無駄」を削減し、商談という付加価値領域に集中させます。
  • コンバージョン最適化:顧客との接点にある摩擦を体系的に取り除き、歩留まりを改善します。
  • データの民主化:受注、ベロシティ(商談速度)、チャーンレートをリアルタイムで可視化し、現場の判断スピードを加速させます。
  • 組織のアラインメント:各部門の「点の活動」を「収益という一本の線」へと繋げ、全社で一つのリズムを刻みます。

前編では、RevOpsがなぜ必要なのか、その戦略的概念を解説しました。後編では、具体的に「どう組織に落とし込むか」に焦点を当てます。組織設計、KPI、そしてこれからのAI時代を見据えたキャリアとテクノロジーのあり方を紐解いていきましょう。

川上エリカ
Problem
Solution
Result

サイカワコーポレーション合同会社 代表社員

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインサイドセールス部およびゼネラルビジネス営業部を統括。営業組織改革、プロセス設計、マーケティングオートメーションを軸としたデジタルシフトを推進し、スタートアップから大手企業までテクノロジーを活用した収益組織の構築を支援。

株式会社みずほ銀行、株式会社リクルートおよび外資系IT企業にて10年以上にわたり法人営業に従事。外資系企業では営業・インサイドセールス・マーケティングを横断統括し、部門連携によるレベニュー最大化を推進。国内外でトップセールス・最優秀社員として多数の表彰を受ける。

2022年エンハンプ株式会社を創業し代表取締役、ゼロワングロース株式会社取締役CROに就任。RevOps構築およびGTM戦略設計を通じて企業の持続的なレベニュー成長を支援。営業モデル設計にとどまらず、パイプラインマネジメント、フォーキャスト高度化、部門横断データ統合を含むレベニューオペレーション全体の設計・変革を専門とする。日本におけるRevOps実践の第一人者として、レベニュー予測可能な組織モデルの普及に取り組む。

2026年2月、Xactly株式会社 日本GTM統括責任者(Head of GTM, Japan)に就任。2026年3月サイカワコーポレーション合同会社設立。

著書に『レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)。

More Templates